病は食から(5)

 世の中、お金さえ出せば好きなものがすぐ手に入るような時代です。つい自分の好きなものに手が出てしまうのが人情です。でも、そこを少し我慢して、栄養過剰にならないよう、いろんな種類のものをバランスよく食べることが大事だと思います。それも季節はずれの野菜ではなく、旬の物を食べることが大事です。温室で水耕栽培で造られたものでは、大切なミネラルやビタミンの補給にはなりません。その季節にできるものを、自然の状態で作ること。季節はずれのものは珍しいから高く売れるというので、かぎりある燃料を使って促成栽培をするのでしょうが、自然に反したことはよくないと思います。

 また病気だった頃、何かよい回復方法はないかといろいろ読み漁った本の一冊に、「夏野菜は体を冷やす働きがあり、冬野菜には体を暖める働きがある」と書いてありました。それなのに、冬の寒い中、トマトやキュウリなど、夏にできるはずの野菜を食べれば、よけい体が冷えて血液の流れを悪くする原因ともなり、体によいはずがありません。また、何かの雑誌で、癌とビタミン、ミネラルの関係についても読んだことがあります。
 ハムやスモークサーモン、ソーセージ、かまぼこ等の加工食品には、いろいろな食品添加物が入っています。
 その中には、発癌物質のもとになるものがあることはご存知でしょう。その食品添加物の一つである亜硝酸塩が発癌物質に変化するのを、ビタミンA・C・Eとミネラルの一種セレニウムが防ぐと書いてありました。また、それらの大量投与で癌を治すこともできると報じられていました。
 その大切なビタミンを多く摂取するために、食事がいかに大事かということです。

 戦後日本に高度成長の兆しが現れた頃、「蛋白質が足りないよ」というテレビコマーシャルがありました。
 確かにその頃はそうだったかもしれません。しかし、今は”グルメブーム”とかなんとかいって、どこそこのお店にこんなおいしいものがあると聞けば、みんなが殺到する時代です。豪華なフランス料理がテレビで紹介されれば、だれでも食べてみたいと思うでしょう。そんな豪華な食事はできなくても、料理の本を見て、それに近いものを家庭で作ることもできます。だんだん贅沢をするようになり、今は、蛋白質過剰の時代になってしまいました。
 特に、動物性蛋白質は、癌の増殖を助ける栄養源になるといいます。癌患者は絶対動物性蛋白質は食べないように注意することが大切です。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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