告知の条件(2)

 また、癌であることを知らないと、どうしても平気で無理をしてしまうのが、こわいと思います。
 本当のことを知り、死にたくないのなら、体に気をつけるはずです。

 どうせ助からないのだからとまで思わなくても、本人がショックを受けてガクッとくるのではないかと心配して、告知できない方が多いと思います。元気になってほしいけれど、本当のことはいえないと、隠しながら家族がハラハラして見守っているというケースもよく見かけます。しかし、治ってほしいのなら、本人に自覚させ、体に注意するよう促さなければいけないと思います。

 手術をして、もうこれで治ったのだと安心して一、二カ月で会社に通いはじめたり、主婦なら、家事をどんどんやりだして、半年か一年で再発、結局返らぬ人となった人を何人も見てきました。もし、本当のことを知っていたら、もう少し気をつけたと思います。
 そして、私のように、体によいと思うことは何でも実行して、本人が癌に勝つのだという気持ちで頑張ったら、再発せずにすんだかもしれません。

 確かに、本人に癌と告白することはむずかしいことだと思います。私も、四、五日の間布団の中で泣いたことがありました。あのとき、主人をはじめ親戚の人達の力強い支えがなかったら自暴自棄になって、何をしていたかわかりません。そして、
「あれほど、真剣に心配してくれる主人のためにも、ここでくじけてはだめだ、こんなに心配してくれているのに元気にならなくては申しわけない」
 と思う気持ちになれたから、断食にもくじけず頑張ることができたのです。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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