再度のテレビ出演(5)

 昼食を済ませて、二時頃の電車で、東京へ行きました。テレビ朝日のスタジオは、六本木にあり、その横の全日空ホテルを予約して下さっており、その晩はそこへ泊まることになっていました。まだオープンして間もない真新しいホテルで、とてもきれいでした。こんな立派なホテルに泊まれるのも、癌を克服したおかげと、何もかもに感謝の気持ちが湧いてきました。

 ホテルのおすし屋さんで、軽く食事をすませ、テレビ局へ行きました。入口に担当ディレクターさんが、迎えに出て来て下さいました。
 先日来、何回か大阪へ来られ、茨木の私の家にも立ち寄られて、我が家の野菜がほとんどの食事を一緒に食べていただいたりして、すっかり親しくなってしまい、一週間ぶりに今度は東京でお会いしたわけですが、なんだかとても懐かしい人に会ったような気がしました。

『癌戦争』のスタジオは、地下三階にありました。生番組はだいたい地下のスタジオを使うようです。
 控室で待っていましたら、一緒に出演する一組のご夫婦が来られました。その方は、信州の諏訪湖の近くから来られた方でNさんといいました。
 担当ディレクターさんから番組構成の説明を聞いているとき、久米宏さんが、セーターにジーンズというラフなスタイルで挨拶に来て下さり、すぐそそくさと出て行かれました。

 番組が始まる5分前、「さあそろそろ行きましょうか」といって、番組担当の方が立ち上がりました。
「ああ、いよいよか、落ち着いて、落ち着いて」
 と、自分にいい聞かせ、深呼吸をして、スタジオに入りました。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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