手術後の経過も順調(4)

 五日目の夕方、やっと尿道に通してあった管が取れました。はじめて歩いてトイレに行くとき、足がふらつき、赤ちゃんのつたい歩きのようにして行きました。でも、頭がくらくらしたりはしませんでした。
 寝たり起きたりするときは、傷口がまだ痛み、ひと苦労でした。しかし、もう何でも自分でしなければならず、痛いのを我慢してベッドの上り降りもしていました。

 六日目の日曜日の朝、体重測定がありました。手術前、54.3キロあったのが、51.2キロになっていました。3キロ以上のものが切り取られたことになります。

 手術のときは見ることができないので、切り取った卵巣を写真に撮っておいてほしいと、主人に頼んでありました。
 その写真ができたと、主人がもって来てくれたのですが、はじめ見るのが少しこわかったのを覚えています。それは、赤く血にまみれグロテスクなものでした。先生が、これが卵巣癌の塊でこれが子宮、この上に卵巣嚢腫の水泡の大きいのがあったが、それはつぶれて中の液が流れ、薄皮だけになったこと、白いたら子を焼いたのを輪切りにしたように見えるのは卵管で、癌細胞が卵管まで広がりこんなに太くなっている、中につまっているのは癌細胞だ、と説明して下さいました。
 腹膜の一部も切り取り、細胞診に出したそうですが、腹膜には癌細胞がなかったとのことでした。

 腹水が溜まるということは、癌が腹膜に転移して癌性腹膜炎を起こすからで、そうなったら助かる見込みはないと聞いたことがあります。でも、腹膜の癌細胞が見あたらないということは、二年前自然に腹水が引きだしたとき、癌細胞が自然消滅したことになるのではないかと、私は思っています。大きくなりすぎた卵巣をもとの大きさに戻すことはできなかったのですが、腹膜にあった癌細胞は自然消滅したのでしょう。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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