生きている幸せ(2)

 58年5月3日は、私達の銀婚式の日でした。二回目の腹水が溜まった頃の「あと二年で銀婚式なのに、それまで生きていられるだろうか。せっかく23年間無事過ごしてきたのだから、せめてその日まで生きていたい」という希望が叶い、元気で迎えることができたのです。

 銅婚式の頃は、子供が小さく、二人で旅行などできる状態ではありませんでした。特別なお祝いもしなかったのですが、銀婚式には二人で記念旅行をしようと、前から主人と楽しみにしておりました。

 入院していた頃、「元気になったらハワイへ連れて行ってやる。早く元気になれ」と、主人によくいわれたのですが、まだハワイの海で泳ぐ自信はありませんでした。

 ある方が、お祝いにと有馬温泉に招待して下さり、主人と二人で行きました。
 二泊三日-主人も、仕事のことを忘れ、のんびり過ごしました。子供を置いて、二人だけで家をあけるのはそれがはじめてでしたが、私が入院してから子供達も急にしっかりして、留守にすることに何の不安もなく、でかけることができました。

 ハワイまでは行けませんでしたが、二人でゆっくり時間を過ごし、生きている幸せを満喫しました。

ch3-10

この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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