生きている幸せ(1)

 元気になったとはいえ、ミルク断食の後喜んだのも束の間、また腹水が溜まったという苦い経験があるだけに、まだ不安はありました。しかし、暖かくなるにつれ、体力もどんどん回復し、疲れないようお昼寝をしながらでしたが、家事もぼつぼつできるようになりました。でも夕食の支度や買物などは、子供がしてくれるので、退屈しのぎによく編物をしました。世話をかけた主人の姉に感謝の気持ちを込めてベストを編みました。片道一時間半もかけて私の家まで通って来てくれた姉にはほんとうによくしてもらいました。私には”小姑鬼千匹”などという言葉は通用しません。

 元気になるにつれ、私は、何もしないで家にじっとしていられなくなり、何かしたくてたまらなくなりました。

 6月から週に1回、公民館で和裁の講座があることを知り、習い始めました。朝9時から12時まででしたが、帰ると疲れて2,3時間お昼寝をしていました。でも、そのうちそれも必要なくなりました。

 病気のことばかり考えて、一人家にいるより、外に出れば気も晴れるし、励みにもなると思いました。年頃の三人の娘にも何か縫ってやりたいという気持ちもありました。その気持ちは、今になっても変わらず、実際、娘達の着物も少しずつ数が増えています。

 57年も無事終わり、またお正月を迎えることができました。

ch3-09

この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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