日増しに回復する体力(1)

 二度目の腹水が溜まってから、週一度、ピシバニールの注射を続けていました。二月末のとても寒い日でしたが、いつものように注射をしてもらって帰る途中、昼食をすませようかと、千里中央で車を止めたのですが、寒くてどうしようもないのです。注文したものが来るのを待っている間も、どうしてこんなに寒いのだろう、いくら外が寒くてもお店の中は暖かいはずなのにと、思っていました。やっと注文したものが来たのですが、全然食欲がなく、少し食べただけで、早々に車に戻りました。寒さで体がガタガタ震えて止まらなくなってしまいました。車のヒーターも最高にし、毛布をかぶっても寒さは治まらず、そのうち腕が冷たく痺れてきて、指先も血の気がなくなり、こすってもこすっても感覚がなくなってきました。

 家に着いても、車から出ることができず、しばらくじっとして寒さをこらえていました。その間に、主人が電気毛布のスイッチを入れ、ストーブをつけ部屋を暖めてくれて、やっとの思いで車から出ると、大急ぎで家に入り、布団の中へもぐり込みました。しかし、その後もガタガタ震えが止まりませんでした。熱を計ったら40度ほどありました。解熱剤の座薬を使ったところ、一時間ほどしたら薬が効いてきて、今度は暑くて汗びっしょりになりました。ともかくもやっとこさ寒さから解放されたのでした。

 次の週、病院でそのことを話したら
「腹水があったときは薬が腹水で薄まっていたのが、腹水がなくなり、薬が効きすぎたのでしょう。腹水も引いたのだから注射はやめましょう」
 と、いわれました。これで毎日の熱と吐き気から解放されるかと思い、私は、ホッとしました。でも注射をやめたら、また悪くなるのではないかという不安も、正直いってありました。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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