新しい年(3)

 スクアレンと出会う少し前、私が最悪の状態の頃、主人は道で旧友と出会ったことがあるそうです。その旧友に「顔色が悪いがどうかしたのか」と聞かれた主人は、私のことを話したそうです。すると、その人は、「岐阜にご祈祷をして病気を治してくれる人がいるから行ってみたらどうか」と教えてくれたそうです。

 主人は、藁をもつかむ思いで、それから日曜毎に、朝四時頃起きて、名神高速を車を飛ばしてお参りに行ってくれました。雪で名神高速が通れないときは、新幹線でと、それは一生懸命でした。

 その方は、名前をTさんといい、60過ぎぐらいの、一度病死したのですが、お葬式の最中に棺桶の中で生き返ったという珍しい体験をもった方でした。Tさんは、その後、山に籠って修業をし、人助けをすることを生きがいとしておられます。事実、Tさんに助けられた方が、大勢いるとのことでした。

 そのTさんが、
「一生懸命心を込めてお祈りすれば、下からきたないものが出てしまって、きっとよくなりますよ」
 といって下さったそうです。

 以前も胃癌で自分で歩くこともできなかった人が、Tさんのところに見えたといいます。その人はTさんにお祈りをしてもらったところ、その場ですごくくさい、肉の腐ったようなものをバケツ一杯くらい吐き、気を失って倒れてしまったそうです。周囲のみんなは、もうこれで最後かと思ったそうですが、悪いものが全部出てしまったのでしょう。その後、その人は見違えるように元気になって、70過ぎた今も、ピンピンしているとのことです。

 私も少し元気になって、二月の寒い時に初めて、主人に連れられてお参りに出かけました。滋賀県に入ったら雪が降りはじめ、チェーンを巻かねばならなくなりました。主人は、路肩で、通り過ぎる車のはね上げるどろ雪を頭からかぶりながら、慣れない手つきでチェーンをかけ、のろのろと苦労して運転していきました。雪の中を病人の私が一緒にお参りに来たので、Tさんは、「よく来られましたね」と、とても喜んで下さいました。

 そのときも、「一生懸命お祈りしたら、きたないものがどんどん出てしまって、きっとよくなりますよ」といって下さり、私は、とても心強く思いました。おりものが出るのは、やはり神様が助けて下さっていたのだ。もっと、どんどん出てほしいと、私は、おりものが出るのを喜ぶようになりました。

ch3-05

この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


ページの
トップへ