日増しに回復する体力(2)

 それからは月に一回、血液検査をしてもらうだけでよくなりました。
 薬の副作用に悩まされることもなくなり、日増しに体力も回復し、まだ不安はありましたが、ぼつぼつ家の用事もできるようになりました。

 私は、以前からミシンで縫いものをすることが好きで、時間があるとスカートなどを縫っていたのですが、前年は、その元気もありませんでした。その反動でしょうか、少し体力が回復したとたん、何か縫いたくてたまらなくなりました。でも大きな布を広げるほどの体力はなく、トイレットペーパーのホルダーのカバーを何枚も縫いました。そのときのミシンの音、今も忘れられません。
「ああ、まだ生きている」
という実感がありました。

 二月には、主人のガウンを作れるくらいになり、それを主人は、今も大事に着てくれています。そのガウンを見ると、その頃のことが思い出されます。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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