再び腹水の苦しみが(3)

 その頃、主人は、私に内緒でS病院の先生に相談に行ったようです。私は、腹水が溜まってきたのだから、当然入院しなければいけないのだろうと思っていました。ところが、今度は入院しないで、週に一回だけピシバニールを注射してもらいに通うことになったのです。

 あとで聞いたことですが、そのとき、主人は先生から、
「今度入院したらもう生きては帰れないでしょう」
といわれたそうで、病院にいるより、一日でも長く家にいさせようという、主人と先生のやさしい思いやりのおかげで入院せずにすんだのでした。

 週に一家の注射は、筋肉にするとあまりに痛いので、腹腔内へ入れてもらうことにしました。太く長い針を、お腹の中まで突きさすのです。腹膜という内側の皮は、とても厚く丈夫にできていて、突き通すのが大変のようでした。病院で順番を待っているのがつらく、主人のひざに頭を乗せ横になっている私を見て、看護婦さんが、それからは診察室の奥のベッドで寝て待っているようにして下さいました。その看護婦さんも主人の熱に感動されたのかいつもとても好意的でした。

看護師

この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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