原因不明の痛み (3)

それから、私は”絶対安静”で、トイレに行くことも禁じられてしまいました。でも、ポータブルトイレで用を足すのがいやで、看護婦さんの目を盗んでそっとトイレに行っていました。

先生からは、「骨盤腹膜炎なら、二、三日うちに高熱が出るはず。それから抗生物質の注射で治療にかかります」といわれていたのですが、何日経っても熱の出る気配がありません。おかしいなと、先生は首をかしげていました。

ともかくも安静にしているうちに、腹痛は徐々に治まっていきました。私もそのうち、じっと寝ているのが退屈になり、屋上から眼下に広がる茨木の街並を同室の人と眺めながら、「あの御陵の森の横に私の家があるの。早く帰りたいな」などと話したりしておりました。 そして、じっとしているぶんには痛まなくなりましたが、寝たり起きたりする度に、胃袋が上下にズズーッと動くような変な痛みが始まり、胃のあたりを手で押さえて、そっと寝起きしなければならなくなりました。

しかし、結局20日間入院しただけで、何の検査も治療もせずに、原因不明のまま退院することになりました。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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