日増しに回復する体力(3)

 三月初め、主人が、「これだけ元気になったのだし、今なら手術にも耐えられるだろうから手術していただけませんか」と、S病院の先生にお願いしたところ、先生も「それじゃ、しましょうか」ということで手術することになりました。麻酔科の先生と相談した結果、3月23日と日も決まり、私も「今度は逃げられない」と覚悟を決めました。

 手術も間近に迫ったある日、主人は風邪を引いてしまい、ある内科のお医者さんのところへ行きました。そこの先生には、以前主人が、私の病状についてうかがったことがありました。
 久しぶりに行って、先生に私の病状について聞かれた主人が、「元気になったから手術しようと思っている」と話すと、先生は、
「元気になりましたか。信じられないことだけど、よかった。しかし、せっかく元気になったのなら、何も急いで手術しなくてもよいのではないですか。切るのはいつでも切れるのだから、あわてず様子を見たほうがよいと思う。私ならそうする」
 と、いわれたそうです。

 主人は、手術の日まで決まっているのに、今さらやめますともいえないしと思い悩み、和歌山のS医師に相談しに行きました。
 S医師も、「手術をしたがために、ほかへ広がって手のつけようがなくなった人もある。せっかく元気になったのだから、やめといたほうがよい」と、いいました。

 そこで、再びS病院の先生にお願いして”手術は中止”ということになりました。こちらから「手術をしてくれ」とお願いして予定日まで決まっていたのに、「やっぱりやめて下さい」なんて、ずいぶん勝手なお願いだと思いましたが、先生は嫌な顔ひとつせず”中止”にして下さいました。

doctor&man01

この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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