不吉な予感(3)

 その後、隣の病室に入って来られたのは婦人科の方でした。手術をして、そのまま運ばれてこられたようで、いつも二、三人の付き添いの人がじいっと見守っているようでした。入口には酸素ボンベが置かれ、ボコボコと泡を立てていました。「いたいー。いたいー」と、弱々しい声がときどき聞こえていました。手術の後ってあんなに痛いのか、大変だなあと思っていました。三日目の夜中でした。しばらく静かだったのが、急にざわざわしだし、
「シーちゃん、シーちゃん」
と呼ぶ声が聞こえてきました。
 先生が走って来られました。付き添いの人達がうとうとしている、ほんのちょっとの間に、その患者さんはもう息を引きとっておられたようです。すすり泣く声が聞こえていました。

-隣室で次々亡くなっていく……次は私の番ではないかと、不吉な予感がしました。いや、そんなとんでもないこと、考えるのはよそうと思い直しながらも、一人でじっと寝ていると本当に不安になりました。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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