ついに『奇跡』を勝ち得た(2)

 CT、RI、腹部胸部のレントゲンなど、いろいろ検査がありましたが、どこも異常はなく、やっと動注の管を抜くことができ、本当に身も心も晴ればれした気持ちで退院しました。

 あれほど強硬に手術をすすめた先生も、本当はこんなに調子よくなるとは思っておられなかったようです。また腹水が溜まり、再入院になるだろうと予想しておられたようで、超音波を掛けながら、「おかしいな本当に治ったのかな」と、一人言をいい、首をかしげておられました。そして、私に、
「南さんは、奇跡の人です。こんなに順調にいくとは思っていなかったから、悪くなったらほかのいろいろな治療法を考えていたのに、何もすることがないですよ」
 と、少々残念(?)そうでした。

 阪大医学部大学院を出てまだ一、二年の若い先生でしたが、とても研究熱心な先生で、卵巣癌の腫瘍マーカーを開発したり、免疫治療の研究をしたりしておられ、前途有望な方だと思います。その先生も、
「病気を治すのは患者自身で、私達医者はその手助けをするだけです」
 と、いっておられました。私もそう思っています。自分の病気は自分で治さなければいけないのです。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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