乗りかかった船(1)

 一週間ぐらい微熱があり、抗生物質の入った点滴が続いたのですが、熱が治まると、用心のためにということで、抗癌剤の点滴が始まりました。

 前にS病院で飲んでいたフトラフールを、今度は点滴でしばらく入れることになりました。先生は、副作用はないといっておられましたが、その二、三日後から吐き気がして食欲がなくなってきました。

 先生に「検査の結果、卵巣と卵管に癌があって、それは全部取れたが、用心のため、動脈内持続注入器(=動注)をとりつけたい」といわれました。私は、また、あの手術後の”寒さ”に耐えなければいけないのか、いやだなあと思ったのですが、もう乗りかかった船で、全部先生におまかせしようと、またそのための手術をすることになりました。
 それは、鼠蹊部の動脈から腹膜に広がる動脈までカテーテルを通し、四六時中、薄い抗癌剤を機械で送り込むものです。
 その病院の婦人科の患者さんはほとんど、その機械を肩から下げていました。

この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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