手術後の経過も順調(1)

 次の日の朝、長女は病院からそのまま出勤し、入れ違いに主人が来て、一日中そばにいてくれました。義母も昼から来て、元気な様子に安心して鎌倉へ帰りました。父は、手術の前日まで、義母と一緒に来ていたのですが、娘の手術が終るのを廊下でじっと待っているのが耐えるにしのびなかったのだろうと思います。ひと足先に、鎌倉へ帰っていました。

 その父に、以前、見舞に来てくれたとき、
「親より先に死ぬほど、親不孝なことはない。絶対、親より先には死ぬな」
 といわれたのを覚えています。その気持ち、私も人の親となり、自分の娘がもしそんなことになったらと考えたら、よくわかります。親不孝をせずにすみ、本当によかったと思います。ずいぶん心配をかけいましたが、これからは今までの分まで、うんと親孝行しなければと思っております。

 夕方、右手首の、永い点滴用針がやっと抜かれました。主人は、泊まろうかといってくれたのですが、もう一人で大丈夫だからと、帰ってもらいました。

 その夜巡回に来た看護婦さんが、排尿が50ccぐらいしかないのに気づき、先生にあわてて連絡し、せっかく点滴が終りやれやれと思っていたのに、また点滴をすることになりました。利尿剤を入れた点滴を1000cc、ビン二本分しました。手術の前の晩から飲まず食わずでしたから、ある程度は出が悪いのは仕方ないのでしょう。しかし、点滴液が体内に相当量入っているのですから、やはり排尿がそんなに少ないのは異常だったのかもしれません。

 しばらくしたら、利尿剤が効いて、どんどん排尿し、看護婦さんもよかったと安心していました。
 でも私自身には、膀胱から直接管でベッドの横に下げたビニール袋に尿が溜まるようになっているので、排尿の量は全然わかりませんでした。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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