『癌』がきれいに取れた(4)

 手術中、何時間も裸同然で手術台の上に乗せられていたのだろうと思います。部屋へ帰ってから、寒さで体がガタガタ震えてとまらず、困りました。寒いからと、横向きになって体を縮めることなどできず、大の字になったまま震えていました。湯たんぽを両側にいくつも入れてくれていましたが、全然暖まりませんでした。手も足も動かすことができないし、口は手術中金具を入れて開かされていたらしく、まだこわばって、バカみたいに口を開けたまま顎の関節が動かず、そんな状態で二時間ぐらい震え続けていました。

 手術室から出たのが、一時過ぎだったらしいのですが、夕方になってやっと口を閉じることができました。

 夜になると、震えも治まり、意識もはっきりしてきました。かぶせられている酸素マスクの中が息で暑くなり、口のまわりに汗をかくようになり、自分でマスクをはずし汗を拭き、またかぶせるなど、手も自由に動くようになりました。

 長女は、四月に大学を卒業し、会社に勤めておりました。長女は、夕方勤め先から病院に来て、その夜は一晩中そばに付いていてくれました。ほかの人は意識がはっきりした私を見てひと安心し、帰っていきました。

 夜中の12時頃、意識もはっきりしたからと、酸素マスクがはずされました。

 夜中に吐き気がして、緑色の胃液を5、6回吐いたのですが、長女がいてくれて、とても助かりました。痰は、一度だけ。大きな塊が出ただけでした。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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