『癌』がきれいに取れた(3)

 この病院は、手術の後、すぐそのまま他の患者さんと一緒の六人部屋に入ることがほとんどでしたが、いろいろ不便なこともあるので、私は手術後個室に移されました。病室へ戻ると、主人と二女、私の妹、鎌倉から来た義母、和歌山のおじさんが心配しながら待っていてくれました。

 病室へ着くとすぐ、酸素マスクがかぶせられました。皆がいて話していることは聞こえるのですが、まだ何もしゃべれず、目を開けてごらんといわれれば、少し目を開け、すぐまた眠り込んでしまうという状態でした。

 主人が、「全部きれいに取れたからね」といってくれました。私は、あれだけ先生に念を押しておいたのだし、先生も約束して下さったのだから、そのことは心配していませんでした。
 いや、まだ意識がぼんやりしていてそこまで考えもしませんでしたが、主人は、私が一番そのことを心配しているのではないかと思ったのでしょう、私を安心させようと一番先にそういってくれたのでした。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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