新しい年(2)

 1月の中頃には、腹水もすっかり引いてしまいました。それと同時に、体重が7キロほど、その一カ月で減りました。それだけの腹水が溜まっていたということでしょう。いや、食欲も出て、少しは太ってきているはずですから、8キロ以上の腹水をお腹にかかえていたことになります。8キロの水といえば8000ccぐらいの量になるわけです。腹水とそんなにもたくさん溜まるものなのかと、今さらながら驚きました。

 前の年の7月、ミルク断食の後、腹水が引いたときは、きれいにぺしゃんこになっていて、卵巣が腫れているとはいっても、さわってわかることはありませんでした。
 ところが今度は、上向きに寝てお腹をなでると、右の下腹にゴロッと大きな塊がはっきり手に触れるのです。上からさわった感じでは、直径15センチくらいあるようでした。
 この四、五カ月の間にどんどん大きくなったようです。腹水でパンパンに膨らんでいたのでわからなかったのです。
 S病院の先生も、「ずいぶん大きくなったわねえ」と、びっくりしておられました。

 腹水が引いてしばらくすると、今度は急にみかんのしぼり汁のような黄色い”おりもの”が始まりました。だらだらと流れ出るのがわかるほどでした。ナイト用生理ナプキンを二枚重ねていても、それが、ビショビショになるほどで、うっかりすると流れ出る量が吸収される量より多く、横から流れ出ることもありました。

 それと同時に、ゴロッと手に触れていた卵巣が少しずつ小さくなっていきました。病院の先生も、確かに小さくなってきたと喜んで下さいました。また、おりものについては「腹水になるはずの水が、卵管を伝って出てくるのかもしれない」といわれました。

 -でも、あんない腹水が溜まっていたとき、おりものなど全然なかったのに、今頃になってどうして出てきたのだろう。腹水が溜まっていたときは卵管も圧迫されていて、水が通らなかったのかな、とか自分なりに考えたりしていました。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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