これで癌から生還できる!(3)

 主人にしたら、もうこれが最後の決め手、どうぞこれが効いてくれますようにと、必死だったのでしょう。私にS医師から借りて来た参考資料を声を出して読んで聞かせ、「絶対これで治るから。今すぐ飲むように」というのでした。肝油は薄黄色の透明なゼラチンカプセル状のものでした。

 肝油というと昔からビタミンA・Dなどの補給のために飲むものというイメージがありました。
 しかし、資料によると、この肝油は、深海千メートルぐらいの所に棲む特別なサメの肝油からスクアレンという成分だけを抽出したもので、弱った体に活力を与え、自然治癒力を高めること、ヘミングウェイの『老人と海』の中にも、未精製のサメ肝油を「これは体によいから」と飲む場面があり、漁師は昔から飲んでいたことなどが書いてありました。

 私は、「効いてほしい」と祈りつつ飲みました。

 一週間くらいしたらきっと効いてくると、主人は期待に胸をふくらませ、毎日
「どうや、何か変わったことはないか」
 と聞くのですが、「別に変わりない」と、そっけなく私は答えます。そんな日が何日か続きました。

 「最初からあまりたくさん飲まないで、二、三粒にしておき、少しずつ増量するように」
 と主人にいわれ、私はそのとおりにしました。そして一週間目くらいからは、朝昼晩と日に三回、六、七粒飲むようにしました。

この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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