三か月ぶりの帰宅(2)

 しかし、元気になったとはいえ、完全に治ったわけではありません。癌を”退縮”させ、癌をもちながら、共存していくというのが、断食道場の方針です。気を許せば、いつ癌の勢力が増大するかわかりません。S病院にいたとき始めた丸山ワクチンは、鎌倉に住んでいる父が、東京までもらいに行き、送ってくれていました。その父も「抗癌剤はやめたほうがいいかもしれないが、丸山ワクチンは副作用がないから続けたほうがよいのではないか」といいます。

 しかし、それを注射してもらうため、一日おきにS病院にまで通うのは大変です。どうしたものかと考えた末、思いきって、自分でしてみようと思い、近くの薬局へ注射器と針を買いに行きました。顔見知りの薬局なので、「まさか麻薬の注射じゃないでしょうね」などと冗談をいっていましたが、「丸山ワクチンを注射するの」といったら、「しばらく見ないうちに急に細くならはってどうしたのかと思ったら、そうだったのですか」と、びっくりしていました。

 買って来た注射器をおなべで煮沸消毒して、自分で注射してみました。はじめは出来るかなと心配でしたが、ソーッと注射針をさしてみたら、それほど痛くもありませんでした。

この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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