三か月ぶりの帰宅(1)

 7月8日。N病院へ再入院した日から、ちょうど三か月目。新しいワンピースに、うっすらお化粧までして、懐かしのわが家へ意気揚々と帰って来ました。ミルク断食はずっと続けなければいけないということだったので、体が本当に心配なくなるまで、退院祝いはお預けとなりました。

 主人や子供たちも、皆指圧の研修を受けて帰り、家でも主人と子供が交替で、毎日マッサージをしてくれました。家事も子供達三人で当番を決め、学校から帰ってからこまごまとやってくれました。

 次々と女の子ばかり生まれ、「お嫁にやるのが大変ですね」と同情して下さる方がよくありましたが、女の子でよかったと思います。男の子ばかりだったら、家のことが心配で、ゆっくり入院などしている気分にはなれなかったと思います。

 長い間、ほとんど寝て暮らしていたので、弱った足腰を少しずつ鍛えようと、毎朝、主人は散歩に連れ出してくれました。茨木市は、まだ自然が多く残っていて、田んぼの畦道などを二人で歩きました。そんな折、通りがかった近所の人が、主人に「奥さん、その後、如何ですか」と、聞くのです。すぐ後にいる私があまりにも細くなって、昔の面影がなかったのでしょう。私だと気がつかれないのです。主人が、
「お陰様で元気に退院して、ここにいますよ」
というと、
「いやー、びっくりした。すっかりスマートになって。娘さんと間違えたわ!」
と、いわれ、大笑いしたこともありました。

この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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