「おまえは、末期癌なんだよ」(2)

 自分が癌にかかっていることを知り、自覚しないことには、断食などそう簡単にできるものではありません。ここへ来た癌患者は、必ず癌であることを告げられるわけです。道場のK先生に告げられて、私がびっくりしてとり乱しはしないかという心配も、主人にはあったのでしょう。そんな大事なことは、先生より先に自分自身で思いきっていってしまった方がよいと思ったのかもしれません。しかし、そのときの私は、主人が心配したほどとり乱したりもせず、自分でも信じられないほど冷静だったと思います。

 しばらくして、K先生が私を見るなり、「腹水がだいぶ溜まっていますね」と、いわれました。N病院の先生は、私がお腹が張って苦しいと何度もいったのに、腹水だとは気がついてくれなかった。それが、ただ坐っている私を一目見ただけで、腹水が溜まっていることがわかるなんて、大したものだと感心しました。

 K先生は、マッサージをしながら、
「これはひどい。体中に癌がある。まあ一か月頑張ってみるか」
 と、いわれました。いつ退院できるかわからない病院と違って、一カ月とはっきりとした期限をいわれ、一か月したら家へ帰れるのだと思うと、私は、とてもうれしくなりました。一か月くらいなら、なんとか頑張れるだろうと思いました。

 皆のマッサージが終わった後、先生は、患者さんを集めて、”なぜ癌になるのか。ミルク断食とマッサージでなぜ癌が治るのか”などについて熱弁をふるわれました。私は、その話を聞いているうちに、体中のどこに癌があっても、断食は体全体を根本からよくしていくのだから、心配ないと思うようになりました。

カレンダー

この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


ページの
トップへ