つらい検査の日々(4)

 婦人科に来てから、手術後の点滴のために今は血管を大切にしたいということで、栄養剤の点滴がなくなりました。手術は腹水を抜いてからということでした。先生は私のお腹に局部麻酔の注射をし、超音波で腹腔内を見ながら、腸を傷つけないよう注意しながら太いチューブをさしこみました。ずいぶん太いチューブだったのでしょう。男の先生が力一杯突きさしてもなかなか入りませんでした。ガーゼで目隠しをしようとされましたが、私はそれをことわり、もの珍しいので、まわりを見まわしていました。やっとチューブが腹腔内へ入り、お茶のような黄色い液体が”受けビン”にポタポタと出てきました。チューブは、抜けないように、手術用の糸で皮膚に縫いつけられました。

 私の気持ちなど関係なしに、手術の準備が整っていきます。私は、ただされるがままといった感じでした。

 腹水というものは、元来血液によって体中へ運ばれるはずの栄養水が何らかの原因で、吸収されずに腹腔内に溜まったもので、抜きとれば体が衰弱すると内科の先生から聞いていました。食事はほとんど口にできず、点滴はやめてしまい、そのうえ腹水まで抜いてしまい、体が弱りきった状態で手術などして大丈夫なのだろうかと、すごく不安になりました。

 先生に、
「こんな状態で手術をしても大丈夫なのですか」
 と聞いてみましたが、
「心配ないですよ」とこともなげにいっておられました。

 今になってみると、そのとき手術しなくて本当によかったと思います。病と寿命は別だとよくいいますが、私にまだ寿命があったのでしょう。「今手術したらいけない」と虫の知らせがあったような気がします。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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