腹水が原因だった (3)

56年のお正月を迎えました。そして、二月、三月と相変わらず、お腹が張って苦しいと思いながら過ごしていました。その頃、体重は64キロのままでした。しかし、腕や太ももは少し細くなり、背中の贅肉が落ち、そのぶんウエストが太くなって次々と大きなスカートにとりかえ、しまにはカギホックのところにゴムひもをつけて、やっととめておくといった状態でした。

三月の末の日曜日、以前から習っていた詩吟の昇段試験があり、友人たちとバスや電車を乗り継ぎ、一時間半ほどかけて会場に行きました。歩くと下腹部に響いて痛くてたまらず、そっと歩こうとするので、一緒に行く友人についていけず、だんだん遅れてしまいそうになりました。そのたいに「お腹が痛いのとちがう?」と、友人は心配してくれましたが、 とにかくやっとの思いでついて行きました。

昇段試験は年に2回しかなく、一度受けそこなうと半年待たねばなりません。せっかく一所懸命指導して下さる先生のためにも休んでは申しわけないと、我慢して出掛けたものでした。お腹に力を入れ声を出すたびに痛みが走るのをなんとか最後までこらえ、頑張り通しました。結果は、無事合格。しかし、うれしいというより痛みがつらいというのが正直な気持ちでした。

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この記事は昭和62年10月発行の書籍『「主治医」はだんなさま』より転載しています。


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